ベテイーのくつ

 それは、初春のころで、とうさんが牧場をすきで耕しているのが見えてきました。近づけば近づくほど、歩くペースがどんどん落ちます。この まま見つからないでわきをすり抜けられればいいなあと思っていたのですが、やっぱりだめで、とうさんは、すきをひく馬たちを柵まで連れていってそこに繋ぎ、と げのあるワイヤーをまたいできて「体調でも悪いのか?」と私に聞きました。おこられると思って、とうとう目からあふれるように涙が流れ出ます。学校を途中でぬけだしてきたからです。泣きながら、何が起こったかを話しました。私の靴は、もう修理しようのないほどひどく破れていました。
 夏にはたいてい裸足でいたけれど、学校が始まるときには、一学年間もつようにと丈夫な靴を一人一足いつも買ってもらっていたものです。もし靴を修理しなければならない場合は、とうさんが破れたところを縫ったり、古いタイヤの堅い部分を新しい靴底として付けてくれるのです。
 それなのに、その秋、私は一生でもう二度としないと決めたことをしてしまいました。グレーのスエードでゴム底の靴に一目ぼれしたのです。私が今まで見たなかでとびきりすてきな靴でした。母さんにその靴を買ってくれるように説得して、とうとう買ってもらいました。でも、とうさんがかあさんにあの靴は2度と修理がきかないし、すぐに駄目になるとしかりつけるのを見て、私はとても悪いことをしたと思いました。
 ――でも、とうさんは正しかったのです。
 平日の間、運動場で遊んでいるとずっと、クラスメイトに靴のことでひどくからかわれ続けられたのです。そして、とうとうその日、我慢できなくなり何も言わずに学校から走って逃げ出しました。家は2マイル離れたところにあり、私はとうさんが見えるまで走り続けました。
 何があったのかを話すと、とうさんはとても悲しい顔になって、「もう家に帰って母さんの手伝いでもしなさい」とだけ言いました。
 その夜、私が寝床についた後、台所からとうさんの声が聞こえてきました。「あの砂糖の入れ物をとってくれないか?」
 かあさんがそれをひっくり返すと、コインがテーブルにあたる音が聞こえました。
「60セントか?よかった。これで明日ベテイに新しい靴が買ってやれる。」
「でも、それはあなたの新しい靴を買うために貯めていたお金でしょ?どうするの?」とかあさんは声を荒げました。すると、とうさんは、「お金が貯まるまで段ボールを使って靴底にするよ。」と。
 私は、一人で泣きながら眠りにつきました。
 その夜だけでなく、私は、とうさんが段ボールを切っては、自分のとても古くて縁の革が曲がりくねって破れている靴底を張り替えるのを、いつもみていました。とうさんは、すきをひく馬の後ろをついて歩くなど、いつもたくさん歩いていましたし。今、またこの話を書いて思い出して、本当に悪いことをしたとおもいます…。

0 comments: